手袋を買いに
てぶくろをかいに
Buying Mittens
(1943)
新見南吉
Niimi Nankichi
(1913-1943)
This work is a very famous fairy tale known to every Japanese person. Reading the tender, loving interactions between the mother fox and her cub warms the heart. While no difficult words are used, it features colloquial speech that has evolved from its original form. Though simple sentences predominate, a few longer, complex sentences are mixed in, making it an excellent work for practicing reading Japanese novels. (About 3000 letters)
Foxes have long been familiar animals to the Japanese people. While sometimes revered as messengers of the gods, they were also believed to possess the power to transform into humans and deceive them, making swamps appear as baths or tree leaves seem like money.
寒い冬が北方から、狐の親子の棲んでいる森へもやって来ました。
ある朝洞穴から子供の狐が出ようとしましたが、
「あっ」と叫んで眼を押さえながら母さん狐のところへころげて来ました。
「母ちゃん、眼に何か刺さった、ぬいて頂戴早く早く」と言いました。
母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を押さえている子供の手を恐る恐るとりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。母さん狐は洞穴の入口から外へ出て初めてわけが分かりました。昨夜のうちに、真っ白な雪がどっさり降ったのです。その雪の上からお陽さまがキラキラと照らしていたので、雪は眩しいほど反射していたのです。雪を知らなかった子供の狐は、あまり強い反射をうけたので、眼に何か刺さったと思ったのでした。
子供の狐は遊びに行きました。真綿のように柔らかい雪の上を駆け回ると、雪の粉が、しぶきのように飛び散って小さい虹がすっと映るのでした。
すると突然、うしろで、
「どたどた、ざーっ」と物凄い音がして、パン粉のような粉雪が、ふわーっと子狐におっかぶさって来ました。子狐はびっくりして、雪の中にころがるようにして十メートルも向こうへ逃げました。何だろうと思ってふり返って見ましたが何もいませんでした。それは樅の枝から雪がなだれ落ちたのでした。まだ枝と枝の間から白い絹糸のように雪がこぼれていました。
間もなく洞穴へ帰って来た子狐は、
「お母ちゃん、お手々が冷たい、お手々がちんちんする」と言って、濡れて牡丹色になった両手を母さん狐の前にさしだしました。母さん狐は、その手に、は――っと息をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり包んでやりながら、
「もうすぐ暖かくなるよ、雪をさわると、すぐ暖かくなるもんだよ」といいましたが、かあいい坊やの手に霜焼ができてはかわいそうだから、夜になったら、町まで行って、坊やのお手々にあうような毛糸の手袋を買ってやろうと思いました。
暗い暗い夜が風呂敷のような影をひろげて野原や森を包みにやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く浮かびあがっていました。
親子の銀狐は洞穴から出ました。子供の方はお母さんのお腹の下へはいりこんで、そこからまんまるな眼をぱちぱちさせながら、あっちやこっちを見ながら歩いて行きました。
やがて、行く手にぽっつりあかりが一つ見え始めました。それを子供の狐が見つけて、
「母ちゃん、お星さまは、あんな低いところにも落ちてるのねえ」とききました。
「あれはお星さまじゃないのよ」と言って、その時母さん狐の足はすくんでしまいました。
「あれは町の灯なんだよ」
その町の灯を見た時、母さん狐は、ある時町へお友達と出かけて行って、とんだめにあったことを思い出しました。およしなさいっていうのもきかないで、お友達の狐が、ある家の家鴨を盗もうとしたので、お百姓に見つかって、さんざ追いまくられて、命からがら逃げたことでした。
「母ちゃん何してんの、早く行こうよ」と子供の狐がお腹の下から言うのでしたが、母さん狐はどうしても足がすすまないのでした。そこで、しかたがないので、坊やだけを一人で町まで行かせることになりました。
「坊やお手々を片方お出し」とお母さん狐がいいました。その手を、母さん狐はしばらく握っている間に、可愛い人間の子供の手にしてしまいました。坊やの狐はその手をひろげたり握ったり、つねってみたり、嗅いでみたりしました。
「何だか変だな母ちゃん、これなあに?」と言って、雪あかりに、またその、人間の手に変えられてしまった自分の手をしげしげと見つめました。
「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず表に丸いシャッポの看板のかかっている家を探すんだよ。それが見つかったらね、トントンと戸を叩いて、今晩はって言うんだよ。そうするとね、中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の隙間から、こっちの手、ほらこの人間の手をさし入れてね、この手にちょうどいい手袋頂戴って言うんだよ、わかったね、決して、こっちのお手々を出しちゃ駄目よ」と母さん狐は言いきかせました。
「どうして?」と坊やの狐はききかえしました。
「人間はね、相手が狐だと分かると、手袋を売ってくれないんだよ、それどころか、掴まえて檻の中へ入れちゃうんだよ、人間ってほんとに恐いものなんだよ」
「ふーん」
「決して、こっちの手を出しちゃいけないよ、こっちの方、ほら人間の手の方をさしだすんだよ」と言って、母さんの狐は、持って来た二つの白銅貨を、人間の手の方へ握らせてやりました。
子供の狐は、町の灯を目あてに、雪あかりの野原をよちよちやって行きました。始めのうちは一つきりだった灯が二つになり三つになり、はては十にもふえました。狐の子供はそれを見て、灯には、星と同じように、赤いのや黄色いのや青いのがあるんだなと思いました。やがて町にはいりましたが通りの家々はもうみんな戸を閉めてしまって、高い窓から暖かそうな光が、道の雪の上に落ちているばかりでした。
けれど表の看板の上には大抵小さな電燈がともっていましたので、狐の子は、それを見ながら、帽子屋を探して行きました。自転車の看板や、眼鏡の看板やその他いろんな看板が、あるものは、新しいペンキで描かれ、あるものは、古い壁のようにはげていましたが、町に初めて出て来た子狐にはそれらのものがいったい何であるか分からないのでした。
とうとう帽子屋がみつかりました。お母さんが道々よく教えてくれた、黒い大きなシルクハットの帽子の看板が、青い電燈に照らされてかかっていました。
子狐は教えられた通り、トントンと戸を叩きました。
「今晩は」
すると、中では何かことこと音がしていましたがやがて、戸が一寸ほどゴロリとあいて、光の帯が道の白い雪の上に長く伸びました。
子狐はその光がまばゆかったので、めんくらって、まちがった方の手を、――お母さまが出しちゃいけないと言ってよく聞かせた方の手をすきまからさしこんでしまいました。
「このお手々にちょうどいい手袋下さい」
すると帽子屋さんは、おやおやと思いました。狐の手です。狐の手が手袋をくれと言うのです。これはきっと木の葉で買いに来たんだなと思いました。そこで、
「先にお金を下さい」と言いました。子狐はすなおに、握って来た白銅貨を二つ帽子屋さんに渡しました。帽子屋さんはそれを人差指のさきにのっけて、カチ合わせて見ると、チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じゃない、ほんとのお金だと思いましたので、棚から子供用の毛糸の手袋をとり出して来て子狐の手に持たせてやりました。子狐は、お礼を言ってまた、もと来た道を帰り始めました。
「お母さんは、人間は恐ろしいものだっておっしゃったがちっとも恐ろしくないや。だって僕の手を見てもどうもしなかったもの」と思いました。けれど子狐はいったい人間なんてどんなものか見たいと思いました。
ある窓の下を通りかかると、人間の声がしていました。何というやさしい、何という美しい、何というおっとりした声なんでしょう。
「ねむれ ねむれ
母の胸に、
ねむれ ねむれ
母の手に――」
子狐はその唄声は、きっと人間のお母さんの声にちがいないと思いました。だって、子狐が眠る時にも、やっぱり母さん狐は、あんなやさしい声でゆすぶってくれるからです。
するとこんどは、子供の声がしました。
「母ちゃん、こんな寒い夜は、森の子狐は寒い寒いって啼いてるでしょうね」
すると母さんの声が、
「森の子狐もお母さん狐のお唄をきいて、洞穴の中で眠ろうとしているでしょうね。さあ坊やも早くねんねしなさい。森の子狐と坊やとどっちが早くねんねするか、きっと坊やの方が早くねんねしますよ」
それをきくと子狐は急にお母さんが恋しくなって、お母さん狐の待っている方へ跳んで行きました。
お母さん狐は、心配しながら、坊やの狐の帰って来るのを、今か今かとふるえながら待っていましたので、坊やが来ると、温かい胸に抱きしめて泣きたいほどよろこびました。
二匹の狐は森の方へ帰って行きました。月が出たので、狐の毛なみが銀色に光り、その足あとには、コバルトの影がたまりました。
「母ちゃん、人間ってちっとも恐かないや」
「どうして?」
「坊、間違えてほんとうのお手々出しちゃったの。でも帽子屋さん、捕まえやしなかったもの。ちゃんとこんないい暖かい手袋くれたもの」
と言って手袋のはまった両手をパンパンやって見せました。お母さん狐は、
「まあ!」とあきれましたが、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやきました。
寒い/冬が/北方から、/【狐の/親子の/棲んで/いる】【森】へも/やって来ました。
ある/朝/洞穴から/子供の/狐が/出ようと/しましたが、/
「あっ」と/叫んで/眼を/押さえながら/母さん狐の/ところへ/ころげて/来ました。
「母ちゃん、/眼に/何か/刺さった、/ぬいて/頂戴/早く/早く」と/言いました。
母さん狐が/びっくりして、/あわてふためきながら、/【眼を/押さえて/いる】子供の/【手】を/恐る恐る/とりのけて/見ましたが、/何も/刺さっては/いませんでした。母さん狐は/洞穴の/入口から/外へ/出て/初めて/わけが/分かりました。昨夜の/うちに、/真っ白な/雪が/どっさり/降ったのです。その/雪の/上から/お陽さまが/キラキラと/照らして/いたので、/雪は/眩しいほど/反射して/いたのです。【雪を/知らなかった】子供の/【狐】は、/あまり/強い/反射を/うけたので、/《眼に/何か/刺さった》と/思ったのでした。
子供の/狐は/遊びに/行きました。【真綿のように/柔らかい】【雪】の/上を/駆け回ると、/雪の/粉が、/しぶきのように/飛び散って/小さい/虹が/すっと/映るのでした。
すると/突然、/うしろで、/
「どたどた、ざーっ」と/物凄い/音が/して、/パン粉のような/粉雪が、/ふわーっと/子狐に/おっかぶさって/来ました。(突然→して)
子狐は/びっくりして、/雪の/中に/ころがるように/して/十メートルも/向こうへ/逃げました。《何だろう》と/思って/ふり返って/見ましたが/何も/いませんでした。それは/樅の/枝から/雪が/なだれ落ちたのでした。まだ/枝と/枝の/間から/白い/絹糸のように/雪が/こぼれて/いました。(まだ→こぼれて/いました)
【間もなく/洞穴へ/帰って/来た】【子狐】は、/
「お母ちゃん、/お手々が/冷たい、/お手々が/ちんちんする」と/言って、/【濡れて/牡丹色に/なった】【両手】を/母さん狐の/前に/さしだしました。
母さん狐は、/その/手に、/は――っと/息を/ふっかけて、/ぬくとい/母さんの/手で/やんわり/包んで/やりながら、/
「もうすぐ/暖かく/なるよ、/雪を/さわると、/すぐ/暖かく/なるもんだよ」と/いいましたが、/かあいい/坊やの/手に/霜焼が/できては/かわいそうだから、/《夜に/なったら、/町まで/行って、/【坊やの/お手々に/あうような】毛糸の/【手袋】を/買って/やろう》と/思いました。(あうような→手袋)
暗い/暗い/夜が/風呂敷のような/影を/ひろげて/野原や/森を/包みに/やって/来ましたが、/雪は/あまり/白いので、/包んでも/包んでも/白く/浮かびあがって/いました。
親子の/銀狐は/洞穴から/出ました。子供の/方は/お母さんの/お腹の/下へ/はいりこんで、/そこから/まんまるな/眼を/ぱちぱちさせながら、/あっちや/こっちを/見ながら/歩いて/行きました。
やがて、/行く手に/ぽっつり/あかりが/一つ/見え始めました。それを/子供の/狐が/見つけて、/
「母ちゃん、/お星さまは、/あんな/低い/ところにも/落ちてるのねえ」と/ききました。
「あれは/お星さまじゃないのよ」と/言って、/その/時/母さん狐の/足は/すくんで/しまいました。
「あれは/町の/灯なんだよ」
【その/町の/灯を/見た】【時】、/母さん狐は、/【ある/時/町へ/お友達と/出かけて/行って、/とんだ/めに/あった】【こと】を/思い出しました。【[《およしなさい》って/いう][の]も/きかないで、/お友達の/狐が、/ある/家の/家鴨を/盗もうと/したので、/お百姓に/見つかって、/さんざ/追いまくられて、/命からがら/逃げた】【こと】でした。
「母ちゃん/何/してんの、/早く/行こうよ」と/子供の/狐が/お腹の/下から/言うのでしたが、/母さん狐は/どうしても/足が/すすまないのでした。そこで、/しかたがないので、/坊やだけを/一人で/町まで/【行かせる】【こと】に/なりました。
「坊や/お手々を/片方/お出し」と/お母さん狐が/いいました。
その/手を、/母さん狐は/【しばらく/握って/いる】【間】に、/可愛い/人間の/子供の/手に/して/しまいました。坊やの/狐は/その/手を/ひろげたり/握ったり、/つねって/みたり、/嗅いで/みたり/しました。
「何だか/変だな/母ちゃん、/これ/なあに?」と/言って、/雪あかりに、/また/その、/【人間の/手に/変えられて/しまった】自分の/【手】を/しげしげと/見つめました。(また→見つめました)
「それは/人間の/手よ。いいかい/坊や、/町へ/行ったらね、/たくさん/人間の/家が/あるからね、/まず/【表に/丸い/シャッポの/看板の/かかって/いる】【家】を/探すんだよ。それが/見つかったらね、/トントンと/戸を/叩いて、/《今晩は》って/言うんだよ。そう/するとね、/中から/人間が、/すこうし/戸を/あけるからね、/その/戸の/隙間から、/こっちの/手、/ほら/この/人間の/手を/さし入れてね、/【この/手に/ちょうど/いい】【手袋】/頂戴って/言うんだよ、/わかったね、/決して、/こっちの/お手々を/出しちゃ/駄目よ」と/母さん狐は/言いきかせました。
「どうして?」と/坊やの/狐は/ききかえしました。
「人間はね、/相手が/《狐だ》と/分かると、/手袋を/売って/くれないんだよ、/それどころか、/掴まえて/檻の/中へ/入れちゃうんだよ、/人間って/ほんとに/恐い/ものなんだよ」
「ふーん」
「決して、/こっちの/手を/出しちゃ/いけないよ、/こっちの/方、/ほら/人間の/手の/方を/さしだすんだよ」と/言って、/母さんの/狐は、/【持って/来た】二つの/【白銅貨】を、/人間の/手の/方へ/握らせて/やりました。
子供の/狐は、/町の/灯を/目あてに、/雪あかりの/野原を/よちよち/やって/行きました。【始めの/うちは/一つきりだった】【灯】が/二つに/なり/三つに/なり、/はては/十にも/ふえました。狐の/子供は/それを/見て、/《灯には、/星と/同じように、/【赤い】【の】や/【黄色い】【の】や/【青い】【の】が/あるんだな》と/思いました。やがて/町に/はいりましたが/通りの/家々は/もう/みんな/戸を/閉めて/しまって、/高い/窓から/暖かそうな/光が、/道の/雪の/上に/落ちて/いる/ばかりでした。(同じように→あるんだな)
けれど/表の/看板の/上には/大抵/小さな/電燈が/ともって/いましたので、/狐の/子は、/それを/見ながら、/帽子屋を/探して/行きました。自転車の/看板や、/眼鏡の/看板や/その/他/いろんな/看板が、/ある/ものは、/新しい/ペンキで/描かれ、/ある/ものは、/古い/壁のように/はげて/いましたが、/【町に/初めて/出て/来た】【子狐】には/《それらの/ものが/いったい/何であるか》/分からないのでした。
とうとう/帽子屋が/みつかりました。①【お母さんが/道々/よく/教えて/くれた】、②【黒い/大きな/シルクハットの/帽子の】【看板】が、/青い/電燈に/照らされて/かかって/いました。
子狐は/教えられた通り、/トントンと/戸を/叩きました。
「今晩は」
すると、/中では/何か/ことこと/音が/して/いましたが/やがて、/戸が/一寸ほど/ゴロリと/あいて、/光の/帯が/道の/白い/雪の/上に/長く/伸びました。
子狐は/その/光が/まばゆかったので、/めんくらって、/【まちがった】【方】の/手を、/――【お母さまが/《出しちゃ/いけない》と/言って/よく/聞かせた】【方】の/手を/すきまから/さしこんで/しまいました。
「【この/お手々に/ちょうどいい】【手袋】/下さい」
すると/帽子屋さんは、/《おやおや》と/思いました。狐の/手です。狐の/手が/《手袋を/くれ》と/言うのです。《これは/きっと/木の葉で/買いに/来たんだな》と/思いました。そこで、/
「先に/お金を/下さい」と/言いました。子狐は/すなおに、/【握って/来た】【白銅貨】を/二つ/帽子屋さんに/渡しました。帽子屋さんは/それを/人差指の/さきに/のっけて、/カチ合わせて/見ると、/チンチンと/よい/音が/しましたので、/《これは/木の葉じゃない、/ほんとの/お金だ》と/思いましたので、/棚から/子供用の/毛糸の/手袋を/とり出して/来て/子狐の/手に/持たせて/やりました。子狐は、/お礼を/言って/また、/【もと/来た】【道】を/帰り始めました。(すなおに→渡しました)
「お母さんは、/《人間は/恐ろしい/ものだ》って/おっしゃったが/ちっとも/恐ろしくないや。だって/僕の/手を/見ても/どうも/しなかったもの」と/思いました。けれど/子狐は/《〈いったい/人間なんて/どんな/ものか〉/見たい》と/思いました。
ある/窓の/下を/通りかかると、/人間の/声が/して/いました。【何と/いう/やさしい】、【何と/いう/美しい】、/【何と/いう/おっとりした】【声】なんでしょう。(何という is used as one phrase that connects to a noun, 声.) "What a ~!"
「ねむれ/ねむれ/
母の/胸に、/
ねむれ/ねむれ/
母の/手に――」
子狐は/《その/唄声は、/きっと/人間の/お母さんの/声に/ちがいない》と/思いました。だって、/【子狐が/眠る】【時】にも、/やっぱり/母さん狐は、/あんな/やさしい/声で/ゆすぶって/くれるからです。(やっぱり→ゆすぶって)
すると/こんどは、/子供の/声が/しました。
「母ちゃん、/こんな/寒い/夜は、/森の/子狐は/《寒い/寒い》って/啼いてるでしょうね」
すると/母さんの/声が、/
「森の/子狐も/お母さん狐の/お唄を/きいて、/洞穴の/中で/眠ろうと/して/いるでしょうね。さあ/坊やも/早く/ねんねしなさい。森の/子狐と/坊やと/どっちが/早く/ねんねするか、/きっと/坊やの/方が/早く/ねんねしますよ」
それを/きくと/子狐は/急に/お母さんが/恋しく/なって、/【お母さん狐の/待って/いる】【方】へ/跳んで/行きました。
お母さん狐は、/心配しながら、/【坊やの/狐の/帰って/来る】【の】を、/《今か今か》と/ふるえながら/待って/いましたので、/坊やが/来ると、/温かい/胸に/抱きしめて/泣きたいほど/よろこびました。
二匹の/狐は/森の/方へ/帰って/行きました。月が/出たので、/狐の/毛なみが/銀色に/光り、/その/足あとには、/コバルトの/影が/たまりました。
「母ちゃん、/人間って/ちっとも/恐かないや」
「どうして?」
「坊、/間違えて/ほんとうの/お手々/出しちゃったの。でも/帽子屋さん、/捕まえや/しなかったもの。ちゃんと/こんな/いい/暖かい/手袋/くれたもの」(ちゃんと→くれた)(こんな→手袋、いい→手袋)
と/言って/【手袋の/はまった】【両手】を/パンパン/やって/見せました。お母さん狐は、/
「まあ!」と/あきれましたが、/「ほんとうに/人間は/いい/ものかしら。ほんとうに/人間は/いい/ものかしら」と/つぶやきました。
寒い/冬が/北方から、/【狐の/親子の/棲んで/いる】【森】へも/やって来ました。
S冬が Vやって来ました。
・In Japanese, explanatory clauses are placed before the noun they describe.
【狐の親子の棲んでいる】【森】=
the forest where the fox family lived
・In sentences within sentences, the subject is often indicated by の instead of が.
ある/朝/洞穴から/子供の/狐が/出ようと/しましたが、/
「あっ」と/叫んで/眼を/押さえながら/母さん狐の/ところへ/ころげて/来ました。
◎Sentence1が、 Sentence2
〇Sentence1 S子供の/狐が V出ようと/しました が
・Sentence+が ”but,” "however"
・出ようと/しました ~ようと/する “to try to do”
出る でる I(Intransitive)V
〇Sentence2 (S)(子供の/狐が) V1叫んで V2ころげて/来ました
・~ながら "while doing ~" (Two actions at the same time) Sub-phrase
「母ちゃん、/眼に/何か/刺さった、/ぬいて/頂戴/早く/早く」と/言いました。
(S)(子供の狐が)「~」と V言いました。
■「母ちゃん、/眼に/何か/刺さった、/ぬいて/頂戴/早く/早く」
・母ちゃん “Mom!”
・眼に/S何か(が)/V刺さった is one sentence. 刺さる(ささる)is IV.
“Something got stuck in my eyes”.
・ぬいて/頂戴(ちょうだい ~てform+ちょうだい is an Imperative form used in casual conversation.
Ex. 塩を取ってください。≒塩、取ってちょうだい。
母さん狐が/びっくりして、/あわてふためきながら、/【眼を/押さえて/いる】子供の/【手】を/恐る恐る/とりのけて/見ましたが、/何も/刺さっては/いませんでした。
◎Sentence1が、Sentence2
○Sentence1 S母さん狐が V1びっくりして O手を V2とりのけて/見ました が
・【眼を/押さえて/いる】【手】Read the context carefully. In Japanese, modifying clauses and the words they modify may be separated.
・とりのけて/見ました ~てform+みる "to try to do" "just do"
In older texts, helping verbs are often written in kanji. Furthermore, in this context, it can also be understood in its original meaning. (取り除ける “to lay aside,” “to remove”+見る “to look at”)
○Sentence2 S何も V刺さっては/いませんでした
・~ては/いませんでした(いない、いなかった etc. Negative form) is an emphatic form of negation.
母さん狐は/洞穴の/入口から/外へ/出て/初めて/わけが/分かりました。
S1母さん狐は V1出て S2わけが V2分かりました
・~てform +初めて is a type of conjunction. The phrase preceding 初めて triggers the occurrence of the content in the following phrase.
Ex. 彼女に言われて初めて、僕は自分の間違いに気づいた。
It wasn't until I was told by her that I realized my mistake.
・PERSONは FACTが 分かる "As for PERSON, FACT is understandable." = "PERSON understands FACT."
昨夜の/うちに、/真っ白な/雪が/どっさり/降ったのです。
S雪が V降ったのです
・うちに “during” “while”
その/雪の/上から/お陽さまが/キラキラと/照らして/いたので、/雪は/眩しいほど/反射して/いたのです。
◎Sentence1ので、Sentence2 = Sentence1, so Sentence2
○Sentence1 Sお陽さまが V照らしていた
○Sentence2 S雪は V反射していたのです
・眩しいほど ~ほど indicates “degree.” “To the extent that 眩しい"
【雪を/知らなかった】子供の/【狐】は、/あまり/強い/反射を/うけたので、/《眼に/何か/刺さった》と/思ったのでした。
◎Sentence1ので、Sentence2 = Sentence1, so Sentence2
○Sentence1 S子供の/狐は O反射を Vうけた ので
○Sentence2 《~》と V思ったのでした
・【雪を知らなかった】is an description of the word 【狐】
■《眼に/何か/刺さった》
S何か(が) V刺さった
"Something got stuck in his eye."
子供の/狐は/遊びに/行きました。
S子供の/狐は V行きました。
【真綿のように/柔らかい】【雪】の/上を/駆け回ると、/雪の/粉が、/しぶきのように/飛び散って/小さい/虹が/すっと/映るのでした。
◎Sentence1と、Sentence2(て)、Sentence3
・Sentence(present form)と、Sentence. This「と」is a conjunctive particle.
“Sentence1” happens, then “Sentence2” happens, too.
Ex. このボタンを押すと、お茶が出ます(でます)。
Cf. Noun1と Noun2 “Noun1 and Noun2”
Ex. 私はケーキとチョコレートを食べた。
○Sentence1 (S)(子供の/狐が) O雪の/上を V駆け回る と
○Sentence2 S雪の/粉が V飛び散って
○Sentence3 S虹が V映るのでした
・~の ように “like ~” “as~” Adverb form (This phrase is connected to adjectives or verbs.)
【真綿のように/柔らかい】【雪】 “snow as soft as silk cotton”
しぶきのように/飛び散って ”scattered like splashes”
・飛び散る とびちる ― 飛び散って とびちって
すると/突然、/うしろで、/
「どたどた、ざーっ」と/物凄い/音が/して、/パン粉のような/粉雪が、/ふわーっと/子狐に/おっかぶさって/来ました。
◎すると Sentence1(て)、Sentence2
○Sentence1 S音が Vして
○Sentence2 S粉雪が Vおっかぶさって/来ました
・「どたどた、ざーっ」、ふわーっ Onomatopoeia
・~の ような Adjective form (This phrase is connected to nouns, like Na-adjectives.)
・ふわーっと(Adv.) → おっかぶさって
・おっかぶさって ― おっかぶさる=覆いかぶさる おおいかぶさる "to cover" IV
・Vて+来る(くる) In older works, helping verbs may be written in kanji. This くる indicates that the action of the Verbて is directed toward this side. “V (towards the child fox)”
子狐は/びっくりして、/雪の/中に/ころがるように/して/十メートルも/向こうへ/逃げました。
S子狐は V1びっくりして V2逃げました。
・ころがるように/して This part describes how he escaped, so it is essentially a verb clause, but it is not treated as an independent sentence here.
《何だろう》と/思って/ふり返って/見ましたが/何も/いませんでした。
◎Sentence1が、Sentence2
○Sentence1 (S)(子ぎつねが) 《何だろう》と V1思って V2ふり返って/見ました が、
・ふり返って/見ました ~てform+みる In this sentence, 見ました can also be understood in its original meaning "to see," "to look at".
○Sentence2 S何も Vいませんでした
・何が changes to 何も when used as the subject in a negative sentence. "there was nothing."
それは/樅の/枝から/雪が/なだれ落ちたのでした。
This sentence is a type of emphatic sentence. (SN)
「それは 【~】【の】でした」→”That is because ~.”
・This “の” is used as a formal noun to create a noun clause.
まだ/枝と/枝の/間から/白い/絹糸のように/雪が/こぼれて/いました。
S雪が Vこぼれて/いました
・絹糸のように(Adv.)→こぼれて/いました
【間もなく/洞穴へ/帰って/来た】【子狐】は、/
「お母ちゃん、/お手々が/冷たい、/お手々が/ちんちんする」と/言って、/【濡れて/牡丹色に/なった】【両手】を/母さん狐の/前に/さしだしました。
S子狐は、「~」と V1言って、O両手を V2さしだしました
■「お母ちゃん、/お手々が/冷たい、/お手々が/ちんちんする」
・お手々=お手手=手 「々」 is a symbol meaning “repeat the preceding kanji.”
お手々 This is baby talk. ちんちんする is now said じんじんする “tingling”
母さん狐は、/その/手に、/は――っと/息を/ふっかけて、/ぬくとい/母さんの/手で/やんわり/包んで/やりながら、/
「もうすぐ/暖かく/なるよ、/雪を/さわると、/すぐ/暖かく/なるもんだよ」と/いいましたが、/かあいい/坊やの/手に/霜焼が/できては/かわいそうだから、/《夜に/なったら、/町まで/行って、/【坊やの/お手々に/あうような】毛糸の/【手袋】を/買って/やろう》と/思いました。
This long sentence will be explained in two parts.
◇Part1(母さん狐は~いいました)が(but)、◇Part2(かあいい~思いました)
◇Part1(母さん狐は~いいました)が、
◎Sentence1(て)、Sentence2が、
〇Sentence1 S 母さん狐は O1息を V1ふっかけて
・ふっかけて=吹きかけて ― 吹きかける ふきかける
○Sentence2 (~ながら)「~」と Vいいました が
・ぬくとい=ぬくい=温かい あたたかい
・~てform/やる=~てform/あげる やるis used for people/things of lower status.
・いいましたが 「が」=but
■「もうすぐ/暖かく/なるよ、/雪を/さわると、/すぐ/暖かく/なるもんだよ」
◎Sentence1(なるよ)、Sentence2(なるもんだよ)
〇Sentence1 (S)your hands(手が) V暖かく+なる “to become warmer”
〇Sentence2 (S1)(あなたが) O雪を V1さわると、(S2)(あなたの手は) V暖かく/なる
・Sentence(present form)と、Sentence. This「と」is a conjunctive particle.
“Sentence1” happens, then “Sentence2” happens, too.
・Sentence+もんだ(ものだ) “Generally speaking,” “It is natural to ~”
Exception なadj. present affirmative Ex.元気なもんだ。
◇Part2 かあいい~と思いました。
◎Sentence1から、Sentence2 "Sentence1, so Sentence2"
〇Sentence1 (S)(子狐が)NaAかわいそうだ から
・~てform+は This is one way of expressing a condition.
S霜焼けが Vできては “if he gets chilblains”
〇Sentence2 (S)(母さん狐は)《~》と V思いました。
■《夜に/なったら、/町まで/行って、/【坊やの/お手々に/あうような】毛糸の/【手袋】を/買って/やろう》
◎Sentence1ら、/Sentence2
〇Sentence1 (S)(時間が) Vなったら
・なったら Past form+ら In this context, it indicates a fixed condition. “when night falls”
(A literal translation of the Japanese would be, “It becomes night.” なる “to become”)
〇Sentence2 (S)(わたしは) V1行って、O手袋を V2買って/やろう
・~て+やる "to do something for someone else" ― やろう Volitional form
・①【坊やの/お手々に/あうような】【手袋】 ②毛糸の【手袋】
暗い/暗い/夜が/風呂敷のような/影を/ひろげて/野原や/森を/包みに/やって/来ましたが、/雪は/あまり/白いので、/包んでも/包んでも/白く/浮かびあがって/いました。
◎Sentence1が、Sentence2ので、Sentence3
○Sentence1 S夜が O影を V1ひろげて V2やって/来ました が(but)
・野原や/森を/包みに 包みます ― 包みに "in order to cover fields and forests"
○Sentence2 S雪は IA白い ので(because) "because Sentence2"
・あまり In this context, "very," "too (much)," "overly"
○Sentence3
・This part is very difficult. The first question is what the subject of 包んでも包んでも is. Judging from the context, the verb 包む was used in the preceding clause, and the subject must be the same as this word—that is, 夜が. Therefore, the translation for this part is "No matter how deeply night covers fields and forests."
・The verb in this sentence is 浮かびあがって/いました. In this case, the scene depicted is one where, even though night is trying to turn the fields and forests black, the snow makes them appear white. Therefore, we can consider “the snow-covered fields and forests 【雪に覆われた】【野原や森】” as the subject. (覆う おおう "to cover" 覆われた is the Passive form.)
親子の/銀狐は/洞穴から/出ました。
S銀狐は V出ました
・出ました でました ― 出る でる Transitive Verb
子供の/方は/お母さんの/お腹の/下へ/はいりこんで、/そこから/まんまるな/眼を/ぱちぱちさせながら、/あっちや/こっちを/見ながら/歩いて/行きました。
S子供の/方は V1はいりこんで、V2歩いて/行きました
・はいりこんで 入り込んで ― 入り込む "to crawl into"
・~ながら "while ~ing"
・ぱちぱちさせる "make (his eyes) blink"
やがて、/行く手に/ぽっつり/あかりが/一つ/見え始めました。
Sあかりが V見え始めました
・行く手 ゆくて "in one's path"
・見え始めました 見える ― 見えます ― 見え+始める "to come into view" "begin to appear"
This is not 見る but 見える "to be in sight" "to be seen" Intransitive V
それを/子供の/狐が/見つけて、/
「母ちゃん、/お星さまは、/あんな/低い/ところにも/落ちてるのねえ」と/ききました。
S子供の/狐が Oそれを V1見つけて 「~」と V2ききました
・見つける "to find out something"
・ききました ― きく 聞く "to ask"
■「母ちゃん、/お星さまは、/あんな/低い/ところにも/落ちてるのねえ」
Sお星さまは V落ちてる
・あんな/低い/ところにも ―「に」「も」
・落ちてる=落ちて+いる
・~のねえ =~んだねえ
「あれは/お星さまじゃないのよ」と/言って、/その/時/母さん狐の/足は/すくんで/しまいました。
◎Sentence1(て)、Sentence2
○Sentence1 (S)母さん狐が 「~」と V言って
・The subject of this part can be understood from the surrounding context.
○Sentence2 S母さん狐の/足は Vすくんで/しまいました
・すくんで ― すくむ 竦む ~てform+しまう
■「あれは/お星さまじゃないのよ」
Sあれは Nお星さまじゃないのよ
・お星さま Baby talk
「あれは/町の/灯なんだよ」
Sあれは N町の/灯なんだよ
【その/町の/灯を/見た】【時】、/母さん狐は、【ある/時/町へ/お友達と/出かけて/行って、/とんだ/めに/あった】【こと】を/思い出しました。
S母さん狐は O【 】【こと】を V思い出しました
・Sentence+時 "When ~" "When she saw the lights of that town"
・【こと】is a formal noun which makes Noun clause.
■【ある/時/町へ/お友達と/出かけて/行って、/とんだ/めに/あった】【こと】
◎Sentence1(て)、Sentence2
○Sentence1 (S) V出かけて/行って
・ある/時 "one day"
・出かけて/行く Nowadays, it is used as a single word. “行く” indicates the direction of moving away from the original location.
・とんだ/めに/あう Idiom "to got a nasty surprise" とんだ "unexpected," "terrible" め(目)"an experience"
【《およしなさい》って/いうのも/きかないで、/お友達の/狐が、/ある/家の/家鴨を/盗もうと/したので、/お百姓に/見つかって、/さんざ/追いまくられて、/命からがら/逃げた】【こと】でした。
This sentence is a Noun Sentence that explains the content of the preceding sentence's 【こと】.
(S)(【こと】in the preceding sentence)は、 N【こと】でした。
・You can also use the demonstrative pronoun それ.
(S)それは N【こと】でした。"It was that 【《およしなさい》……逃げた】"
■《およしなさい》って/いうのも/きかないで、/お友達の/狐が、/ある/家の/家鴨を/盗もうと/したので、/お百姓に/見つかって、/さんざ/追いまくられて、/命からがら/逃げた
◎Sentence1ので、Sentence2
○Sentence1 Sお友達の/狐が V1きかないで、V2盗もうと/した ので、
・《およしなさい》よす(止す)"to stop something" ― よします ― よし+なさい
「お」is a Prefixe for polite language. (お)Verbなさい is an order form.
・《およしなさい》って/いうのも/きかないで
=S1私が《およしなさい》と/V1言うのも、S2(お友達の/狐が)V2聞かないで、
This も is the same as the “何も + negative form” particle.
"ignoring my plea to stop"
○Sentence2 (S)(私たちが) V1見つかって V2追いまくられて V3逃げた
・見つかって ― 見つかる "to be found"
Cf. 見つける "to find out"
・追いまくられて
追う おう"to chase" ― 追い+まくる "to do relentlessly" ― 追いまくられる passive form
・さんざ = さんざん (散々)"harshly"
「母ちゃん/何/してんの、/早く/行こうよ」と/子供の/狐が/お腹の/下から/言うのでしたが、/母さん狐は/どうしても/足が/すすまないのでした。
◎Sentence1が、Sentence2
○Sentence1 S子供の/狐が 「~」と V言うのでした が、
○Sentence2 Topic (As for)母さん狐は S足が Vすすまないのでした
・どうしても "for the life of ~"
・足が すすむ(進む) "(her feet) won't move."
■「母ちゃん/何/してんの、/早く/行こうよ」
・何(を)
・してんの=して+いるの?
・行こうよ 行こう volitional form
そこで、/しかたが/ないので、/【坊やだけを/一人で/町まで/行かせる】【こと】に/なりました。
◎Sentence1ので、Sentence2
○Sentence1 しかたが/ない Idiom "There is no (other) way"
○Sentence2 (S)(the situation) Vなりました
・【~】【こと】に なる "(The situation) is decided to ~."
・行かせる Causative form "to let someone go" "to allow someone to go" ― 行く
「坊や/お手々を/片方/お出し」と/お母さん狐が/いいました。
Sお母さん狐が 「~」と Vいいました
■「坊や/お手々を/片方/お出し」
・坊や "Boy,"
・お出し おだし
出す だす "to put out" ― 出します ― お出し Slightly refined imperative form
その/手を、/母さん狐は/【しばらく/握って/いる】【間】に、/可愛い/人間の/子供の/手に/して/しまいました。
S母さん狐は Oその/手を C手に Vして/しまいました (C=Complement)
・Oを Cに する "to make O C" "to turn O into C"
"The mother fox turned that hand into the cute hand of a human child."
・間 あいだ "while ~"
"while she was holding it for a moment"
・可愛い→手、人間の/子供の→手
坊やの/狐は/その/手を/ひろげたり/握ったり、/つねって/みたり、/嗅いで/みたり/しました。
S坊やの/狐は Oその/手を V1 ひろげたり V2握ったり V3つねって/みたり V4嗅いで/みたり しました
・~たり、~たり "to do things as ~たり、~たり" Using たform
「何だか/変だな/母ちゃん、/これ/なあに?」と/言って、/雪あかりに、/また/その、/【人間の/手に/変えられて/しまった】/自分の/【手】を/しげしげと/見つめました。
◎Sentence1(て)、Sentence2
○Sentence1 (S)(子供の/狐は) 「~」と V言って
■「何だか/変だな/母ちゃん、/これ/なあに?」
・何だか "somehow," "somewhat"
・なあに?=何?
○Sentence2 (S)(子供の/狐は) O手を V見つめました
・また "also," "too"
・①その【手】②【人間の手に変えられてしまった】【手】③自分の【手】
・変えられて passive form ― 変える かえる
"that his own hand which was turned into the hand of a human child"
「それは/人間の/手よ。いいかい/坊や、/町へ/行ったらね、/たくさん/人間の/家が/あるからね、/まず/【表に/丸い/シャッポの/看板の/かかって/いる】【家】を/探すんだよ。それが/見つかったらね、/トントンと/戸を/叩いて、/《今晩は》って/言うんだよ。そう/するとね、/中から/人間が、/すこうし/戸を/あけるからね、/その/戸の/隙間から、/こっちの/手、/ほら/この/人間の/手を/さし入れてね、/《【この/手に/ちょうど/いい】【手袋】/頂戴》って/言うんだよ、/わかったね、/決して、/こっちの/お手々を/出しちゃ/駄目よ」と/母さん狐は/言いきかせました。
S母さん狐は 「~」と V言いきかせました
・言いきかせました ― 言いきかせる "Teach in a way that is easy to understand"
・This section features the mother carefully explaining things to her child, so the sentence-ending particles よ/ね is used frequently. It conveys the nuance of repeatedly asking, “Do you understand?” "OK?"
■「それは/人間の/手よ。
Sそれは N手よ
いいかい/坊や、/町へ/行ったらね、/たくさん/人間の/家が/あるからね、/まず/【表に/丸い/シャッポの/看板の/かかって/いる】【家】を/探すんだよ。
・いいかい、坊や "Listen, boy,"
◎Sentence1ら(ね)、Sentence2から(ね)、Sentence3(よ)
○Sentence1 S(あなたが) V行った ら
・Past form+ら "When/if~, "
○Sentence2 S家が Vある から
・Sentenceから "~、so"
○Sentence3 S(あなたが) O家を V探すんだよ
それが/見つかったらね、/トントンと/戸を/叩いて、/《今晩は》って/言うんだよ。
◎Sentence1ら(ね)、Sentence2
○Sentence1 Sそれが V見つかったら
・見つかったら ― 見つかる "to be found"
○Sentence2 S(あなたが) O戸を V1叩いて、「~」と V2言うんだよ
・今晩は is now written in Hiragana こんばんは. ~って=~と
そう/するとね、/中から/人間が、/すこうし/戸を/あけるからね、/その/戸の/隙間から、/こっちの/手、/ほら/この/人間の/手を/さし入れてね、/《【この/手に/ちょうど/いい】【手袋】/頂戴》って/言うんだよ、/わかったね、/決して、/こっちの/お手々を/出しちゃ/駄目よ」
Normally, periods are used to separate each sentence, but to convey the nuance of the mother speaking in a continuous flow, commas are used instead.
・そうすると is now used as one Conjunction. "then,"
中から/人間が、/すこうし/戸を/あけるからね、
S人間が O戸を V開ける から
その/戸の/隙間から、/こっちの/手、/ほら/この/人間の/手を/さし入れてね、/《【この/手に/ちょうど/いい】【手袋】/頂戴》って/言うんだよ
S(あなたは) O手を V1さし入れて(ね)「~」って V2言うんだ(よ)
《【この/手に/ちょうど/いい】【手袋】/頂戴》
O手袋(を) V頂戴(=ください)
わかったね、/決して、/こっちの/お手々を/出しちゃ/駄目よ」
・わかったね。"Do you understand?"
・出しちゃ/駄目よ =出しては/いけません
「どうして?」と/坊やの/狐は/ききかえしました。
S坊やの/狐は 「~」と Vききかえしました
・ききかえしました ― 聞き返す ききかえす "to ask a question in return"
「人間はね、/相手が/狐だと/分かると、/手袋を/売って/くれないんだよ、/それどころか、/掴まえて/檻の/中へ/入れちゃうんだよ、/人間って/ほんとに/恐い/ものなんだよ」
■「人間はね、/相手が/狐だと/分かると、/手袋を/売って/くれないんだよ、
S人間は(ね) O手袋を V売って/くれない
"Humans won't sell gloves to us."
※~て/くれる S does something for me(my relatives, etc.)
~て/もらう "I or my relatives, etc." get something done.
Pay attention to the subject.
・相手が/狐だと/分かると "when they realized the other side is a fox"
Sentenceと "when Sentene," "Sentence, then"
■それどころか、/掴まえて/檻の/中へ/入れちゃうんだよ、
(S人間は) (O狐を) V1掴まえて V2入れちゃうんだ(よ)
・それどころか "instead," "on the contrary"
・掴まえて=捕まえて 捕まえる つかまえる (掴 This kanji is currently not included in the common usage list.)
・入れちゃう いれちゃう=入れて+しまう
■人間って/ほんとに/恐い/ものなんだよ
S人間って N恐い/ものなんだよ
・人間って=人間は
「ふーん」
"hmm, I see."
「決して、/こっちの/手を/出しちゃ/いけないよ、/こっちの/方、/ほら/人間の/手の/方を/さしだすんだよ」と/言って、/母さんの/狐は、/【持って/来た】/二つの/【白銅貨】を、/人間の/手の/方へ/握らせて/やりました。
S母さんの/狐は、「~」と V1言って、O白銅貨を V2握らせて/やりました
・~て/やる =~て/あげる やるis used when doing something for someone of lower status than the subject.
■「決して、/こっちの/手を/出しちゃ/いけないよ、/こっちの/方、/ほら/人間の/手の/方を/さしだすんだよ」
(Sあなたは) O1こっちの/手を V出しちゃ/いけない(よ)
O2こっちの/方=人間の/手の/方を Vさしだすんだ(よ)
・出しちゃ/いけない=出しては/いけません
In this sentence, 出す だす and 差し出す さしだすhave the same meaning. "to extend," "to hold out," "to submit"
・ほら "See?" "Hey"
・Mom is actually holding her child's hand while giving instructions. O1こっちの/手=this hand = the fox hand O2こっちの/方=the other one =the human hand
子供の/狐は、/町の/灯を/目あてに、/雪あかりの/野原を/よちよち/やって行きました。
S子供の/狐は Vやって行きました
・目あて "guide," "landmark"
・野原を When passing through a place to go somewhere else, use “を”.
・やって行く a word that emphasizes the action of 行く
【始めの/うちは/一つきりだった】【灯】が/二つに/なり/三つに/なり、/はては/十にも/ふえました。
S灯が V1なり V2なり V3ふえました
・なり=なって ― なる "to become"
・はては 果ては "in the end"
狐の/子供は/それを/見て、/《灯には、/星と/同じ/ように、/赤いのや/黄色いのや/青いのが/あるんだな》と/思いました。
S狐の/子供は Oそれを V1見て、《~》と V2思いました
■《灯には、/星と/同じ/ように、/赤いのや/黄色いのや/青いのが/あるんだな》
S赤いのや/黄色いのや/青いのが Vあるんだな
・灯には among lights
・~ように → あるんだな
・赤いの 黄色いの 青いの These の are "one" to avoid repeating the same word "lights".
・ある "to exist"
・~んだな "I understand," "huh,"
やがて/町に/はいりましたが/通りの/家々は/もう/みんな/戸を/閉めて/しまって、/高い/窓から/暖かそうな/光が、/道の/雪の/上に/落ちて/いる/ばかりでした。
◎Sentence1が、Sentence2(て)、Sentence3
○Sentence1 (S子供の/狐は) Vはいりました が
○Sentence2 S家々は O戸を V閉めて/しまって
・家々は "houses" implies "families"
・みんな→閉めて/しまって
○Sentence3 S光が V落ちて/いる
けれど/表の/看板の/上には/大抵/小さな/電燈が/ともって/いましたので、/狐の/子は、/それを/見ながら、/帽子屋を/探して/行きました。
◎Sentence1ので、Sentence2
○Sentence1 S電燈が Vともって/いました ので、
○Sentence2 S狐の/子は O帽子屋を V探して/行きました。
・見ながら ~ながら "while ~ing"
自転車の/看板や、/眼鏡の/看板や/その/他/いろんな/看板が、/ある/ものは、/新しい/ペンキで/描かれ、/ある/ものは、/古い/壁の/ように/はげて/いましたが、/【町に/初めて/出て/来た】【子狐】には/《それらの/ものが/いったい/何で/あるか》/分からないのでした。
◎Sentence1が、Sentence2
○Sentence1
・①ある/ものは、 ②ある/ものは "Some are ~、others are ~”
Sいろんな/看板が、(among them, some are) V1描かれ、(others are) V2はげて/いました が
・はげる 剥げる "(The paint) peels off"
○Sentence2 (To the baby fox) S《~》(が) V分からないのでした
・To PERSON, 《~》was not understandable. = PERSON didn't understand 《~》.
■《それらの/ものが/いったい/何で/あるか》
Sそれらの/ものが N何で/あるか
・それらの もの Those things
・何で/あるか=何だか
とうとう/帽子屋が/みつかりました。
S帽子屋が Vみつかりました
・みつかりました ― みつかる "to be found"
【お母さんが/道々/よく/教えて/くれた】、【黒い/大きな/シルクハットの/帽子の】【看板】が、/青い/電燈に/照らされて/かかって/いました。
S看板が V1照らされて V2かかって/いました
・①【お母さんが/道々/よく/教えて/くれた】【看板】
②【黒い/大きな/シルクハットの/帽子の】【看板】
・道々 みちみち "while walking"
・大きな Over the years, incorrect forms have become established as words. This word doesn't have any conjugation forms. This is distinct from the adjective 大きい and has no usage other than modifying nouns.
・照らされて Passive form ― 照らす
・かかって/いました かかる is an intransitive verb. "A sign was hanging."
子狐は/教えられた/通り、/トントンと/戸を/叩きました。
S子狐は O戸を V叩きました
・~通り "As" ”as he was instructed"
「今晩は」
・Now it is always written in Hiragana. こんばんは
すると、/中では/何か/ことこと/音が/して/いましたが/やがて、/戸が/一寸ほど/ゴロリと/あいて、/光の/帯が/道の/白い/雪の/上に/長く/伸びました。
◎すると、Sentence1が、やがて、Sentence2(て)、Sentence3
○Sentence1 S音が Vして/いました が
・音が/する A sound is coming.
○Sentence2 S戸が Vあいて(開いて)
・一寸 いっすん 寸 is an old unit of length. 一寸 is about 3 cm.
○Sentence3 S光の/帯が V伸びました
・ことこと ゴロリ Onomatopoeia
・道の → 雪 「の」This particle connects to the noun that follows, not an adjective.
子狐は/その/光が/まばゆかったので、/めんくらって、/【まちがった】【方】の/手を、/――【お母さまが/《出しちゃ/いけない》と/言って/よく/聞かせた】【方】の/手を/すきまから/さしこんで/しまいました。
◎Sentence1ので、Sentence2
○Sentence1 TOPIC子狐は(for the child fox) Sその/光が Vまばゆかった ので
・まばゆかった 眩かった ― まばゆい 眩い いadj.
○Sentence2 (S子狐は)V1めんくらって O手を──手を V2さしこんで/しまいました
・めんくらって 面食らって ― 面食らう IV
・①【まちがった】【方】の/手を
②【お母さまが/《出しちゃ/いけない》と/言って/よく/聞かせた】【方】の/手を
The same thing is being repeated with different explanations.
・さしこんで/しまいました 差し込んで+しまう ― 差し込む "to insert" "to put in"
「【この/お手々に/ちょうど/いい】【手袋】/下さい」
・ちょうど/いい "just right (size)"
・下さい ください In older texts, this word is often written in kanji.
すると/帽子屋さんは、/《おやおや》と/思いました。
S帽子屋さんは 《~》と V思いました
狐の/手です。狐の/手が/《手袋を/くれ》と/言うのです。
(Sそれは) N狐の/手です。S狐の/手が 《~》と V言うのです。
・Of course, hands don't speak. This sentence depicts the scene where, from the hatter's perspective, he could only see the hands yet heard a voice.
《これは/きっと/木の葉で/買いに/来たんだな》と/思いました。
(S帽子屋さんは) 《~》と V思いました
■《これは/きっと/木の葉で/買いに/来たんだな》
・The これは in this sentence refers to “this situation” and is the topic, not the subject of the sentence.
(S狐が) V来たんだな
・きっと 買いに来たんだな Guess "He must come to buy ~"
・木の葉で "with leaves"
そこで、/
「先に/お金を/下さい」と/言いました。
(S帽子屋さんは) 「~」と V言いました
■「先に/お金を/下さい」
・先に さきに "first" "beforehand" "in advance"
子狐は/すなおに、/【握って/来た】【白銅貨】を/二つ/帽子屋さんに/渡しました。
S子狐は O白銅貨を V渡しました
・すなおに Adv. form 素直に → 渡しました (素直な なAdj.)
帽子屋さんは/それを/人差指の/さきに/のっけて、/カチ合わせて/見ると、/チンチンと/よい/音が/しましたので、/《これは/木の葉じゃない、/ほんとの/お金だ》と/思いましたので、/棚から/子供用の/毛糸の/手袋を/とり出して/来て/子狐の/手に/持たせて/やりました。
◎Sentence1と、Sentence2ので、Sentence3ので、Sentence4
○Sentence1 S帽子屋さんは Oそれを V1のっけて V2カチ合わせて/見る と
・さき 先 ”point" "tip"
・のっけて =のせて 載せて - 載せる
・カチ合わせて "to clink (two coins) together"
・~てform +見る Currently, helping verbs are written in hiragana みる. "to try to do ~て"
・Sentence1と、Sentence2 "Whenever Sentence1 happens, then Sentence2 happens."
○Sentence2 Sよい/音が Vしました ので
・~音が/する "A sound can be heard."
・チンチンと Onomatopoeia Adj. → しました
○Sentence3 (S帽子屋さんは)《~》と V思いました ので
■《これは/木の葉じゃない、/ほんとの/お金だ》
Sこれは N1木の葉じゃない N2ほんとの/お金だ
〇Sentence4 (S帽子屋さんは) O手袋を V1とり出して/来て V2持たせて/やりました
・①子供用の → 手袋
②毛糸の → 手袋
・持たせて - 持たせる causative form - 持つ もつ
・~て/やる やるis the form of “あげる” used for someone of lower status.
子狐は、/お礼を/言って/また、/【もと/来た】【道】を/帰り始めました。
S子狐は O1お礼を V1言って また O2道を V2帰り始めました
・また "once again"
・【もと/来た】【道】"the way he had come" もと 元 "earlier times" "previously" "before"
「お母さんは、/人間は/恐ろしい/ものだって/おっしゃったが/ちっとも/恐ろしくないや。だって/僕の/手を/見ても/どうも/しなかったもの」と/思いました。
(S子狐は) 「~」と V思いました。
■「お母さんは、/《人間は/恐ろしい/ものだ》って/おっしゃったが/ちっとも/恐ろしくないや。
◎Sentence1が、Sentence2
○Sentence1 Sお母さんは 《 》って Vおっしゃった が
・~って = ~と
・おっしゃった - おっしゃる 言う's honorific word
□《人間は/恐ろしい/ものだ》
S人間は Nものだ
○Sentence2 (S人間は) A恐ろしくない
・ちっとも "(not) at all"
・~や "huh?"
■だって/僕の/手を/見ても/どうも/しなかったもの」
(S人間は) Oどうも Vしなかった
・だって~もの。 "because" もの is used in casual conversation when giving excuses or reasons.
・どうも = 何も "anything / nothing" When も is used, を becomes invisible.
・~てform +も "even though / even if"
けれど/子狐は/《〈いったい/人間なんて/どんな/ものか〉/見たい》と/思いました。
S子狐は 《~》と V思いました
・けれど "but"
■《〈いったい/人間なんて/どんな/ものか〉/見たい》
=〈人間は どんな ものか〉を /見たい
"I want to see what human beings are like."
・This phrase is an indirect question.
・いったい "(what) the heck?"
・~なんて "such a thing like this"
ある/窓の/下を/通りかかると、/人間の/声が/して/いました。
◎Sentence1と、Sentence2 "Sentence1 happens, then Sentence2 happens"
○Sentence1 (S子狐が) O下を V通りかかる と、
・ある "a certain ~" Grammatically, this is not a verb but a word that attaches to nouns, similar to この or その.
○Sentence2 S声が Vして/いました
・声が/する This is an idiom with the same meaning as 声が/聞こえる. "A voice reached the baby fox's ears."
【何と/いう/やさしい】、/【何と/いう/美しい】、/【何と/いう/おっとりした】/【声】なんでしょう。
Noun Sentence N声なんでしょう。
・This is an exclamatory sentence. Three modifying clauses are listed.
①【何と/いう/やさしい】【声】なんでしょう。"What a gentle voice it is!"
②【何と/いう/美しい】【声】なんでしょう。 "What a beautiful voice it is!"
③【何と/いう/おっとりした】【声】なんでしょう。 "What a placid voice it is!"
「ねむれ/ねむれ/
母の/胸に、/
ねむれ/ねむれ/
母の/手に――」
・ねむれ 眠れ This word is the imperative form of 眠る ねむる.
In Japanese, the imperative form is not always very forceful. This part is a verse from a lullaby.
子狐は/《その/唄声は、/きっと/人間の/お母さんの/声に/ちがいない》と/思いました。
S子狐は 《~》と V思いました。
■《その/唄声は、/きっと/人間の/お母さんの/声に/ちがいない》
S唄声は Vちがいない
・~に ちがいない "be bound to~" "must ~"
だって、/子狐が/眠る/時にも、/やっぱり/母さん狐は、/あんな/やさしい/声で/ゆすぶって/くれるからです。
S母さん狐は Vゆすぶって/くれる
・~時に "When ~"
・あんな "such a (gentle voice)"
・ゆすぶって - ゆすぶる/ゆさぶる 揺さぶる
すると/こんどは、/子供の/声が/しました。
S声が Vしました
・すると "And then ~"
・声が/する "a voice is heard."
「母ちゃん、/こんな/寒い/夜は、/森の/子狐は/《寒い/寒い》って/啼いてるでしょうね」
S子狐は 《~》って V啼いてるでしょうね
・夜は = 夜には TIMEに に particle is invisible.
すると/母さんの/声が、/
「森の/子狐も/お母さん狐の/お唄を/きいて、/洞穴の/中で/眠ろうと/して/いるでしょうね。さあ/坊やも/早く/ねんねしなさい。森の/子狐と/坊やと/どっちが/早く/ねんねするか、/きっと/坊やの/方が/早く/ねんねしますよ」
S声が 「~」と (Vしました)
■「森の/子狐も/お母さん狐の/お唄を/きいて、/洞穴の/中で/眠ろうと/して/いるでしょうね。
S子狐も Oお唄を V1きいて、V2眠ろうと/して/いる
・眠ろうと/して/いる Volitional formと/して/いる "be about to ~"
・Sentenceでしょうね。 "I guess that ~." "probably"
■さあ/坊やも/早く/ねんねしなさい。
S坊やも Vねんねしなさい
・坊や is used as a second-person pronoun, equivalent to “you.”
・ねんねしなさい is an order form of ねんねする. This word is baby talk for 寝る.
それを/きくと/子狐は/急に/お母さんが/恋しく/なって、/【お母さん狐の/待って/いる】【方】へ/跳んで/行きました。
◎Sentence1と、Sentence2(て)、Sentence3
○Sentence1 (S子狐は) Oそれを Vきく と
・Sentence+と "~, then, "
○Sentence2 Sお母さんが V恋しく/なって
・恋しく - 恋しい いadj. In English this sentence translates as “The child fox misses his mother,” but in Japanese, it indicates that “for the child, his mother is in a state of being ‘someone he wants to see right now.’”
○Sentence3 V跳んで/行きました
・跳んで/行きました 跳ぶ "to jump, hop" 行く indicate directions "to go away from readers' point of view"
お母さん狐は、/心配しながら、/【坊やの/狐の/帰って/来る】【の】を、/今か今かと/ふるえながら/待って/いましたので、/坊やが/来ると、/温かい/胸に/抱きしめて/泣きたいほど/よろこびました。
◎Sentence1ので、Sentence2と、Sentence3
○Sentence1 Sお母さん狐は O【坊やの/狐の/帰って/来る】【の】を V待って/いました ので
・~ながら "with doing ~" Typically, the last verb not used with ながら becomes the predicate.
・【の】This is used as a formal noun to form a noun clause.
■【坊やの/狐の/帰って/来る】
・坊やの/狐の = 坊やの/狐が In clauses within modifying phrases, の is sometimes used instead of が to explicitly indicate that “this is not the subject of the entire sentence.”
○Sentence2 S坊やが V来る と
・Sentence2+と "~, then,"
○Sentence3 (Sお母さん狐は) V1抱きしめて V2よろこびました
・The subject of the entire sentence is the initially stated お母さん狐は, and since 坊やが/来ると is a subordinate clause, it reverts to the original subject.
二匹の/狐は/森の/方へ/帰って/行きました。
S二匹の/狐は V帰って/行きました
月が/出たので、/狐の/毛なみが/銀色に/光り、/その/足あとには、/コバルトの/影が/たまりました。
◎Sentence1ので、Sentence2(光り)、Sentence3
○Sentence1 S月が V出た ので
・出た でた -出る でる intransitive verb (NOT 出す だす transitive verb)
・Sentence+ので "because Sentence"
○Sentence2 S狐の/毛なみが V光り、
・毛なみ 毛並み "coat (of hair or fur)"
・光り、 Instead of the てform, the stem of the verb in the ます form is often used. (=光って)
- 光る ひかる intransitive verb
○Sentence3 S影が Vたまりました
・その =狐の
・たまりました - たまる "to pool" intransitive verb
・その/足あとには、/コバルトの/影が/たまる is a very poetic expression.
「母ちゃん、/人間って/ちっとも/恐かないや」
S人間って A恐かないや
・人間って = 人間は In daily conversation, “って” is often used instead of particles like ‘が’ or “と”.
・恐かない =恐くない -恐い こわい Variations seen in dialects and children's speech patterns.
Ex. この映画、おもしろかないね。
・~や "~, huh?"
「どうして?」
「坊、/間違えて/ほんとうの/お手々/出しちゃったの。でも/帽子屋さん、/捕まえや/しなかったもの。ちゃんと/こんな/いい/暖かい/手袋/くれたもの」
と/言って/【手袋の/はまった】【両手】を/パンパン/やって/見せました。
(S子狐は) 「~」と V1言って、O両手を V2やって/見せました
・【手袋の/はまった】【両手】 手袋の=手袋が はまった-はまる intransitive verb "both hands with the gloves on"
・パンパン Onomatopoeia "clap clap"
・やって/見せました やって/見せる idiom "to show someone how it's done" -やる "to do" 見せる "to show"
■「坊、/間違えて/ほんとうの/お手々/出しちゃったの。
S坊 V1間違えて Oほんとうの/お手々 V2出しちゃったの
・坊=坊は 坊(ぼう Boy)is used as a first-person pronoun.
・お手々 おてて=お手々を お手々is baby talk for “hand.”
・出しちゃったの=出して/しまったの ~て/しまう "to do in a spontaneous way"
「の」Ending particles that soften assertive expressions
■でも/帽子屋さん、/捕まえや/しなかったもの。
S帽子屋さん (Oぼくを) V捕まえや/しなかった
・帽子屋さん=帽子屋さんは
・捕まえや/しなかった=捕まえなかった Emphasis
・Sentence+もの "because Sentence" This is the answer to the question 「どうして?」
■ちゃんと/こんな/いい/暖かい/手袋/くれたもの」
(S帽子屋さんは) O手袋(を) Vくれた
・こんな→手袋 暖かい→手袋
お母さん狐は、/
「まあ!」と/あきれましたが、/「ほんとうに/人間は/いい/ものかしら。ほんとうに/人間は/いい/ものかしら」と/つぶやきました。
◎Sentence1が、Sentence2 "but"
○Sentence1 Sお母さん狐は 「~」と Vあきれました
・まあ! "Oh, dear!"
・あきれました-あきれる
○Sentence2 (Sお母さん狐は) 「~」と Vつぶやきました
・つぶやきました-つぶやく
■「ほんとうに/人間は/いい/ものかしら。ほんとうに/人間は/いい/ものかしら」
S人間は Nいい/ものかしら
・~かしら "I wonder ~"
|寒い さむい||冬 ふゆ|が|北方 ほっぽう|から、|狐 きつね|の|親子 おやこ|の|棲んで すんで|いる|森 もり|へも|やって来ました やってきました|。
・棲んで すんで ← 棲む すむ “to live”
This word is used with the same meaning as “住む すむ” (to live), but it is specifically used when animals build nests and live there.
「母ちゃん、眼に|何か なにか||刺さった ささった|、ぬいて|頂戴 ちょうだい||早く はやく|早く」と|言いました いいました|。
・刺さった ささった←刺さる ささる IV
Cf. 刺す さす TV
母さん狐がびっくりして、あわてふためきながら、眼を押さえている子供の|手 て|を|恐る恐る おそるおそる|とりのけて見ましたが、何も刺さってはいませんでした。
・あわてふためきながら←あわてふためく(慌てふためく) “to be at panic stations”
・恐る恐る “fearfully,” “cautiously,” “gingerly,” “tentatively” Adv.
母さん狐は洞穴の|入口 いりぐち|から|外 そと|へ|出て でて||初めて はじめて|わけが|分かりました わかりました|。|昨夜 さくや/ゆうべ|のうちに、|真っ白 まっしろ|な|雪 ゆき|がどっさり|降った ふった|のです。
・昨夜 さくや/ゆうべ
This word has two readings, but either one is acceptable.
その雪の|上 うえ|から|お陽さま おひさま|がキラキラと|照らして てらして|いたので、雪は|眩しい まぶしい|ほど|反射 はんしゃ|していたのです。雪を|知らなかった しらなかった|子供の狐は、あまり|強い つよい|反射をうけたので、眼に何か刺さったと|思った おもった|のでした。
子供の狐は|遊び あそび|に|行きました いきました|。|真綿 まわた|のように|柔らかい やわらかい|雪の上を|駆け回る かけまわる|と、雪の|粉 こ|が、しぶきのように|飛び散って とびちって||小さい ちいさい||虹 にじ|がすっと|映る うつる|のでした。
・粉 The kun'yomi reading of this kanji is often こな, but some words use the reading こ.「火の粉 ひのこ」など。
・すっと Onomatopoeia すっ +Particle と
すると|突然 とつぜん|、うしろで、
「どたどた、ざーっ」と|物凄い ものすごい||音 おと|がして、|パン粉 ぱんこ|のような|粉雪 こなゆき|が、ふわーっと|子狐 こぎつね|におっかぶさって来ました。
・どたどた、ざーっ /ふわーっ Onomatopoeia
・おっかぶさって ← おっかぶさる=おおいかぶさる 覆いかぶさる “to hang over,” “to cover” IV
子狐はびっくりして、雪の中にころがるようにして十メートルも|向こう むこう|へ|逃げました にげました|。|何だろう なんだろう|と思って|ふり返って ふりかえって|見ましたが何もいませんでした。それは|樅 もみ|の|枝 えだ|から雪が|なだれ落ちた なだれおちた|のでした。まだ枝と枝の|間 あいだ|から|白い しろい||絹糸 きぬいと|のように雪がこぼれていました。
|間もなく まもなく|洞穴へ|帰って来た かえってきた|子狐は、
「|お母ちゃん おかあちゃん|、|お手々 おてて|が|冷たい つめたい|、お手々がちんちんする」と言って、|濡れて ぬれて||牡丹色 ぼたんいろ|になった|両手 りょうて|を母さん狐の|前 まえ|にさしだしました。
・ちんちんする Currently, we use the word じんじんする/ジンジンする. Its meaning is “tingling,” “throbbing (with pain)”.
母さん狐は、その手に、は――っと|息 いき|をふっかけて、ぬくとい母さんの手でやんわり|包んで つつんで|やりながら、
・ぬくとい Currently, we use the word ぬくい 温い. “warm”
「もうすぐ|暖かく あたたかく|なるよ、雪をさわると、すぐ暖かくなるもんだよ」といいましたが、かあいい|坊や ぼうや|の手に|霜焼 しもやけ|ができてはかわいそうだから、|夜 よる|になったら、|町 まち|まで行って、坊やのお手々にあうような|毛糸 けいと|の|手袋 てぶくろ|を|買って かって|やろうと思いました。
・かあいい = かわいい
・お手々 This word is the baby talk for 手 て.
|暗い くらい|暗い夜が|風呂敷 ふろしき|のような|影 かげ|をひろげて|野原 のはら|や|森 もり|を|包み つつみ|にやって来ましたが、雪はあまり白いので、包んでも包んでも白く|浮かびあがって うかびあがって|いました。
・あまり In this context, it means “very.”
|親子 おやこ|の|銀狐 ぎんぎつね|は洞穴から|出ました でました|。|子供 こども|の|方 ほう|はお母さんの|お腹 おなか|の|下 した|へはいりこんで、そこからまんまるな眼をぱちぱちさせながら、あっちやこっちを見ながら|歩いて あるいて|行きました。
・ぱちぱち Onomatopoeia
やがて、|行く手 ゆくて|にぽっつりあかりが|一つ ひとつ||見え始めました みえはじめました|。それを子供の狐が見つけて、
「母ちゃん、|お星さま おほしさま|は、あんな|低い ひくい|ところにも|落ちてる おちてる|のねえ」とききました。
・ぽっつり Onomatopoeia =ぽつり “isolated,” “standing alone”
・落ちてる=落ちて+いる←落ちる(おちる)
「あれはお星さまじゃないのよ」と言って、その|時 とき|母さん狐の|足 あし|はすくんでしまいました。
「あれは|町 まち|の|灯 ひ|なんだよ」
・すくんで←すくむ 竦む “to become frozen (from fear),” “to cringe”
・灯 ひ light Cf. 火 ひ fire
その町の灯を見た時、母さん狐は、ある時町へ|お友達 おともだち|と|出かけて でかけて|行って、とんだめにあったことを|思い出しました おもいだしました|。
・とんだめにあう とんだ目にあう This phrase consists of three sections: とんだ, 目に, and by 遭う(あう). 「とんだ」
およしなさいっていうのもきかないで、お友達の狐が、ある|家 いえ|の|家鴨 あひる|を|盗もう ぬすもう|としたので、|お百姓 おひゃくしょう|に|見つかって みつかって|、さんざ|追い おい|まくられて、|命からがら いのちからがら||逃げた にげた|ことでした。
・およしなさい is a polite order form of よす (TV "to stop").
よす→よします→(お)しなさい
・さんざ =さんざん 散々 “harshly;” “terribly”
・命からがら/逃げる “to have a narrow escape (from death)”
「母ちゃん|何 なに|してんの、早く行こうよ」と子供の狐がお腹の下から言うのでしたが、母さん狐はどうしても足がすすまないのでした。
・何してんの =何してるの=何を/しているの? 「~の?」is a particle used to form questions in casual conversation.
そこで、しかたがないので、|坊や ぼうや|だけを|一人 ひとり|で町まで行かせることになりました。
・行かせることになりました。 行かせる is the causative form of 「行く」。「~ことに/なる」 “end up,” “result in ~”
「坊やお手々を|片方 かたほう||お出し おだし|」とお母さん狐がいいました。
・お出し おだし is a familiar imperative form of 出す だす “to put out”. 出す だす→出します だします→お出し おだし
その手を、母さん狐はしばらく|握って にぎって|いる|間 あいだ|に、|可愛い かわいい||人間 にんげん|の子供の手にしてしまいました。坊やの狐はその手をひろげたり握ったり、つねってみたり、|嗅いで かいで|みたりしました。
・つねって ←つねる “to pinch”
・嗅いで かいで← 嗅ぐ かぐ “to sniff,” “to smell”
「|何だか なんだか||変だな へんだな|母ちゃん、これなあに?」と言って、|雪あかり ゆきあかり|に、またその、人間の手に|変えられて かえられて|しまった自分の手をしげしげと見つめました。
・これなあに?=これは 何(なに)?
・変えられてしまった かえられてしまった
変える かえる “to change something”→変えられる passive form→変えられて+しまう ~て+しまう
「それは人間の手よ。いいかい坊や、町へ行ったらね、たくさん人間の家があるからね、まず|表 おもて|に|丸い まるい|シャッポの|看板 かんばん|のかかっている家を|探す さがす|んだよ。それが見つかったらね、トントンと|戸 と|を|叩いて たたいて|、|今晩は こんばんは|って言うんだよ。そうするとね、中から人間が、すこうし戸をあけるからね、その戸の|隙間 すきま|から、こっちの手、ほらこの人間の手を|さし入れて さしいれて|ね、この手にちょうどいい|手袋 てぶくろ||頂戴 ちょうだい|って言うんだよ、わかったね、|決して けっして|、こっちのお手々を|出しちゃ だしちゃ||駄目 だめ|よ」と母さん狐は言いきかせました。
・いいかい “All right?” is a gentle call to attention.
・たくさん Adverb This adverb connects to the verb in meaning. Note that it does not connect to the noun immediately following it. When connecting to a noun, the particle “の” is required.
Ex. たくさん人がいた。「たくさん」→「いた」
Therefore, the word order can be changed. 人がたくさんいた。
たくさんの人がいた。「たくさんの」→「人」
The word order cannot be changed.
・シャッポ =chapeau (French)=hat
・すこうし =少し
・頂戴 ちょうだい =ください Currently it is mostly written in hiragana.
・言いきかせました いいきかせました/言い聞かせました ←言いきかせる “to warn,” “talk someone into,” “talk sense into”
「どうして?」と坊やの狐はききかえしました。
・ききかえしました 聞き返しました ←聞き返す “to ask again,” “to ask a question in return”
「人間はね、|相手 あいて|が狐だと|分かる わかる|と、手袋を|売って うって|くれないんだよ、それどころか、|掴まえて つかまえて||檻 おり|の中へ|入れちゃう いれちゃう|んだよ、人間ってほんとに|恐い こわい|ものなんだよ」
「ふーん」
・入れちゃう いれちゃう=入れてしまう ~て+しまう
・ほんとに =本当に ほんとうに Variations in pronunciation
「決して、こっちの手を|出しちゃ だしちゃ|いけないよ、こっちの|方 ほう|、ほら人間の手の方をさしだすんだよ」と言って、母さんの狐は、|持って来た もってきた||二つ ふたつ|の|白銅貨 はくどうか|を、人間の手の|方 ほう|へ|握らせて にぎらせて|やりました。
・出しちゃいけない 出す だす TV “to put out” →出しては+いけない→出しちゃ+いけない Variations in pronunciation
・白銅貨 はくどうか Japanese coins issued during the Meiji(1868-1912) and Taisho(1912-1926) eras and used until 1953. Face value : 5 sen(銭). 銭 was worth one hundredth of a yen.
子供の狐は、町の|灯 ひ|を|目あて めあて|に、|雪あかり ゆきあかり|の|野原 のはら|をよちよちやって行きました。
・目あて “landmark,” “goal”
・よちよち Onomatopoeia “toddling”
・やって行く “to go” The word 行く in this context indicates a direction moving away from the reader's field of vision. Conversely, 来る creates an effect of approaching the reader.
|始め はじめ|のうちは一つきりだった灯が二つになり|三つ みっつ|になり、はては|十 とお|にもふえました。
・はては (果ては) “in the end”
・ふえました (増えました) 増える ふえる IV “to increase”
狐の|子供 こども|はそれを見て、灯には、星と|同じ おなじ|ように、|赤い あかい|のや|黄色い きいろい|のや|青い あおい|のがあるんだなと思いました。やがて町にはいりましたが|通り とおり|の|家々 いえいえ|はもうみんな戸を|閉めて しめて|しまって、|高い たかい||窓 まど|から|暖かそうな あたたかそうな||光 ひかり|が、|道 みち|の雪の上に落ちているばかりでした。
けれど|表 おもて|の|看板 かんばん|の上には|大抵 たいてい|小さな|電燈 でんとう|がともっていましたので、狐の子は、それを見ながら、|帽子屋 ぼうしや|を|探して さがして|行きました。
・ともって (灯って) 灯る ともる IV “to be lighted”
|自転車 じてんしゃ|の看板や、|眼鏡 めがね|の看板やその|他 ほか|いろんな看板が、あるものは、|新しい あたらしい|ペンキで|描かれ かかれ|、あるものは、|古い ふるい||壁 かべ|のようにはげていましたが、町に|初めて はじめて||出て来た でてきた|子狐にはそれらのものがいったい|何 なん|であるか分からないのでした。
・はげて (剥げて) 剥げる はげる IV “to peel off,” “to discolor”
・出て来た でてきた 出て来る でてくる Currently, “来る” is written in hiragana. “to come out”
・なんで/あるか=なんだか “what it is”
とうとう帽子屋がみつかりました。お母さんが|道々 みちみち|よく|教えて おしえて|くれた、|黒い くろい||大きな おおきな|シルクハットの帽子の看板が、青い電燈に|照らされて てらされて|かかっていました。
・道々 みちみち “along the way”
・かかって (掛かって) 掛かる かかる IV “to hang”
子狐は教えられた通り、トントンと戸を|叩きました たたきました|。
・トントンと Onomatopoeia “with a knock”
「|今晩は こんばんは|」
すると、中では何かことこと|音 おと|がしていましたがやがて、戸が|一寸 いっすん|ほどゴロリとあいて、光の|帯 おび|が道の白い雪の上に長く|伸びました のびました|。
・ことこと Onomatopoeia “with a rattling sound”
・一寸 いっすん 寸 is a unit of length used in Japan in the past. 一寸 is approximately 3.03 centimeters.
・ゴロリ Onomatopoeia In this context, it depicts the sound made when heavy objects roll or move.
子狐はその光がまばゆかったので、めんくらって、まちがった方の手を、――お母さまが出しちゃいけないと言ってよく|聞かせた きかせた|方の手をすきまからさしこんでしまいました。
・まばゆかった (眩かった) 眩い まばゆい “dazzling,” “glaring”
・めんくらって (面食らって) 面食らう めんくらう “to be confused”
・聞かせる きかせる In this context, “to make (someone) understand”
「このお手々にちょうどいい手袋|下さい ください|」
すると帽子屋さんは、おやおやと思いました。狐の手です。狐の手が手袋をくれと言うのです。
・おやおや “Oh, dear!”
これはきっと|木の葉 このは|で買いに来たんだなと思いました。そこで、
「|先に さきに|お金を下さい」と言いました。
・木の葉 このは Traditionally, this word is read as このは.
・先に さきに “first,” “ahead of ~,” “before (something else)”
子狐はすなおに、握って来た白銅貨を二つ帽子屋さんに|渡しました わたしました|。帽子屋さんはそれを|人差指 ひとさしゆび|のさきにのっけて、|カチ合わせて かちあわせて|みると、チンチンとよい音がしましたので、これは木の葉じゃない、ほんとのお金だと思いましたので、|棚 たな|から|子供用 こどもよう|の毛糸の手袋を|とり出して とりだして|来て子狐の手に|持たせて もたせて|やりました。子狐は、|お礼 おれい|を言ってまた、もと来た道を帰り始めました。
・カチ合わせる “to clink (two coins) together”
・チンチン The light sound of metal striking metal “a jingle”
・もと来た道 “the way he had come” 元 もと is “previously,” “earlier times”
「お母さんは、人間は|恐ろしい おそろしい|ものだっておっしゃったがちっとも恐ろしくないや。だって|僕 ぼく|の手を見てもどうもしなかったもの」と思いました。けれど子狐はいったい人間なんてどんなものか見たいと思いました。
・おっしゃった ←おっしゃる This verb is a respectful form for 言う.
・どうもしなかった どうも/しなかった ←どうも=何も なにも
・なんて Currently, this word carries a nuance of looking down on or mocking the preceding noun, but in the context of this work, it simply means “something like ~.”
ある|窓 まど|の下を|通りかかる とおりかかる|と、人間の声がしていました。|何 なん|というやさしい、何という|美しい うつくしい|、何というおっとりした|声 こえ|なんでしょう。
・何という “How (kind/beautiful) it is!” These are words for making exclamatory sentence.
・おっとりした “gently”
「ねむれ ねむれ
|母 はは|の|胸 むね|に、
ねむれ ねむれ
母の手に――」
・ねむれ ←眠る ねむる Order form
子狐はその|唄声 うたごえ|は、きっと人間のお母さんの声にちがいないと思いました。だって、子狐が|眠る ねむる||時 とき|にも、やっぱり母さん狐は、あんなやさしい声でゆすぶってくれるからです。
・唄声=歌声 うたごえ “singing voice”
・きっと ~ に ちがいない This is a set phrase used when you're about 90% certain something is true. “It must be ~”
・ゆすぶる (揺すぶる)”to rock (a cradle, etc.)”
するとこんどは、子供の声がしました。
「母ちゃん、こんな|寒い さむい||夜 よる|は、森の子狐は寒い寒いって|啼いてる ないてる|でしょうね」
・啼いてる ないてる=啼いて+いる ←啼く なく This kanji is not included in the list of kanji for common use, but it is used to create poetic and emotional effects. Usually, the kanji 鳴 is used.
すると母さんの声が、
「森の子狐もお母さん狐の|お唄 おうた|をきいて、|洞穴 ほらあな|の中で|眠ろう ねむろう|としているでしょうね。さあ坊やも早くねんねしなさい。森の子狐と坊やとどっちが早くねんねするか、きっと坊やの方が早くねんねしますよ」
・お唄 おうた=お歌 おうた 「お」is a Prefixes for Polite Language
・ねんね This is the baby talk form of 寝る ねる.
それをきくと子狐は|急に きゅうに|お母さんが|恋しく こいしく|なって、お母さん狐の|待って まって|いる方へ|跳んで とんで|行きました。
・恋しく←恋しい こいしい
・跳んで とんで←跳ぶ とぶ “to jump” Cf. 飛ぶ とぶ “to fly”
お母さん狐は、|心配しながら しんぱいしながら|、坊やの狐の帰って来るのを、|今か今か いまかいまか|とふるえながら|待って まって|いましたので、坊やが来ると、|温かい あたたかい|胸に|抱きしめて だきしめて||泣きたい なきたい|ほどよろこびました。
・今か今かと いまかいまかと “anxiously,” “eagerly”
|二匹 にひき|の狐は森の方へ帰って行きました。|月 つき|が|出た でた|ので、狐の|毛なみ けなみ|が|銀色 ぎんいろ|に|光り ひかり|、その|足あと あしあと|には、コバルトの|影 かげ|がたまりました。
・たまりました←たまる 溜まる “(water, etc.) pool” “Shadows pooled in the hole.” This sentence is very poetic.
「母ちゃん、人間ってちっとも|恐かない こわかない|や」
・ちっとも=全然 ぜんぜん “(not)…at all”
・恐かない こわかない=恐くない こわくない←恐い こわい
「どうして?」
「|坊 ぼう|、|間違えて まちがえて|ほんとうのお手々|出しちゃった だしちゃった|の。でも帽子屋さん、|捕まえや つかまえや|しなかったもの。ちゃんとこんないい|暖かい あたたかい|手袋くれたもの」
と言って手袋のはまった両手をパンパンやって見せました。お母さん狐は、
「まあ!」とあきれましたが、「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやきました。
・坊 ぼう=坊や ぼうや “boy” When children are young, they sometimes use the first-person pronoun their mother uses to address them.
・出しちゃった だしちゃった=出して+しまった
・捕まえやしなかった つかまえやしなかった This is a form of emphasis in a negative sentence meaning 捕まえなかった つかまえなかった. .(捕まえや+しなかった)
Ex. 食べます→食べや+しない/起きます→起きや+しない/飲みます→飲みや+しない/書きます→書きや+しない/します→しや+しない/来ます きます→来や きや+しない
・パンパン Onomatopoeia “slap,” “clap”
・見せる みせる “to show”
・~かしら “I wonder ~”